令和8年度事業活動計画
1.基本方針
当所は、業種別の9つの部会活動や、経営指導員による巡回・相談を通じて寄せられた会員の声を踏まえ、令和8年度の事業運営に取り組む。
会員を取り巻く経営環境は、賃金や原材料価格の上昇、人手不足の深刻化が続く中、十分な価格転嫁が進まず、収益確保に苦慮する状況が継続している。加えて、政策金利の引き上げに伴う借入金利の上昇、後継者不足による事業承継問題、ICT化・デジタル化への対応の遅れなど、経営課題は複合的かつ中長期化しており、企業経営を取り巻く環境は一層厳しさを増している。
また、地域経済の基盤となるインフラ整備に関しては、産業用立地の不足により工場の建て替えや移転先の確保が困難となっていることや、市街化調整区域における規制が企業活動の制約となっているとの声が寄せられている。あわせて、佐賀市中心部の活性化に向けた具体的な将来像、有明海沿岸道路、Tゾーン、九州新幹線西九州ルート、九州佐賀国際空港の機能強化など、広域的な交通ネットワークの整備に関する見通しについて、分かりやすい情報提供を求める声も多い。
こうした状況を踏まえ、当所は会員に最も身近な経済団体として、経営指導員や専門家等の知見を最大限に活用し、「地元企業との伴走」を強化するとともに、「未来に向けた幅広い対話の推進」を通じて、地域経済の持続的発展に寄与することを基本方針とする。
2.重点事項
(1)地元企業との伴走
地域経済を取り巻く環境は、人手不足の深刻化、燃油・原材料価格の高騰、賃金アップ、後継者不在による事業承継問題、デジタル化・DX対応の遅れなど、複合的かつ構造的な課題に直面している。こうした状況を踏まえ、当所は、地道に会員往訪を行い、会員の皆様の声を丁寧にお聞きし、共に考え、共に進む「地元企業との伴走」をより一層強化していく。また、小規模事業者の皆様の厳しい実情を国や行政にしっかりと伝え、補助金や支援策の充実に加えて、事業者にとって使い勝手の良い制度設計といった点についても、引き続き要望していく。
ア 巡回強化
経営指導員等による巡回訪問を強化し、経営状況や現場の課題を丁寧に把握したうえで、国・県・市の支援施策や補助金制度等に関する情報をタイムリーに提供し、効果的な支援につなげる。
また、燃油・原材料価格の高騰や賃金アップといった経営環境の変化に対応するため、価格転嫁に向けた助言・支援や、取引価格の適正化を図るパートナーシップ構築宣言事業所の登録促進に取り組む。
イ 人手不足対策と生産性向上
人手不足への対応については、省力化・生産性向上を重要課題と位置づけ、AI・IoT等の先端技術やDX・ICTの活用による業務効率化を支援する。教育機関等と連携したリスキリング講座、セミナーや実務研修の開催に加え、専門家による伴走やスモールスタートでの導入を通じて、現場に即した実効性のある取り組みを後押しする。
また、働き手の確保・定着の観点から、従業員の健康保持・増進が重要であることを踏まえ、健診および二次診療の重要性について会員への周知・啓発を行う。関係機関と連携し、健康経営の視点を取り入れた職場環境づくりを促進することで、就労継続や生産性向上につなげる。
さらに、外国人材やシニア層の活躍促進、Uターン・Iターン就職支援、海外人材の受入支援など、人材の多様化に向けた取り組みを関係機関と連携して推進する。
ウ DX・デジタル化による経営課題解決
DXの検討以前の経営課題の整理・見える化を重視し、何から着手すべきか分からない小規模事業者等に対しても、経営指導員による伴走を通じて課題を整理し、段階的なデジタル化や生産性向上につなげる支援を行う。
また、サイバーセキュリティ対策についても、関係機関や専門家と連携し、基礎的な対策導入や意識啓発を図る。
エ 創業支援と創業後の継続フォロー
地域経済の新陳代謝と持続的成長を図るため、創業支援にも積極的に取り組む。創業計画の策定支援や資金調達に関する助言・支援を行うとともに、創業後も巡回や相談を通じて継続的なフォローアップを実施し、早期の経営安定と成長を後押しする。
オ 事業承継支援と円滑な世代交代の促進
後継者不足による廃業を防ぐため、巡回を通じた事業承継対象先の掘り起こしを行い、 佐賀県事業承継・引継ぎ支援センターと連携して、事業承継計画の策定支援や補助金活用 支援を通じて円滑な承継を促進する。必要に応じて M&A 等も視野に入れ、事業者の実情 に即した支援体制を整備する。
カ 販路開拓・人材育成
新商品開発や販路拡大に取り組む事業所に対しては、商談会等の情報提供や出展支援を行うとともに、特に海外展開を目指す事業者に対しては、中小企業基盤整備機構や日本貿易振興機構といった関係機関と連携した商談機会の創出を図る。加えて、人材育成セミナーの開催や中小企業大学校受講費助成などを通じて、経営力・技術力の向上を支援する。
(2)未来に向けた幅広い対話の推進
日本全体で人口減少が進み、佐賀県においても今後25年間で人口が2割以上減少すると見込まれている中、地域経済の持続的発展を図るためには、短期的課題への対応にとどまらず、中長期的視点に立った議論と方向性の共有が不可欠である。令和7年度において、部会活動や会員との対話を通じ、産業用団地の整備による若者の定着、中心市街地の活性化、そして物流・人流を呼び込む交通ネットワークの構築などについて、経済界として主体的に関与する必要性が改めて明らかとなった。令和8年度においては、国・県・市 をはじめとする関係機関との継続的な対話を通じて、地域経済の将来像に関する情報共有と課題整理を進めるとともに、経済界としての意見を適切に発信していく。また、令和11年4月の開学が予定されている佐賀県立大学(仮称)等との対話を通じ、在学中から地元 企業を知る機会を創出し、若者の地元定着と将来の人材確保につながる取組を推進する。
ア 行政との継続的かつ実効性のある対話の推進
県・市の関係部局や関係機関・団体等との意見交換を継続的に実施し、まちづくり施策や商工振興施策について、経済団体の立場からの意見や提案を積極的に発信する。特に、佐賀市とは、地域の問題意識を共有しながら協力関係を強化し、実務担当者レベルでの交流の場を設け、ざっくばらんな意見交換を通じて相互理解を深め、施策の実効性向上につなげる。
イ 会員の声を起点とした対話の深化
部会活動やアンケート調査を通じて、業種別・規模別の課題や要望を体系的に把握するとともに、経営指導員が小規模事業者を個別に巡回し、現場の困りごとや行政への要望を丁寧に聞き取る機能を強化する。収集した意見は、部会における議論や要望活動へとつなげることで、個々の会員の声が埋もれない対話の循環を構築する。
ウ 部会活動を軸とした学びと交流の場の創出
部会単位での勉強会、視察会、会員交流事業を積極的に実施し、会員同士が課題や先進事例を共有できる機会を拡充する。県内外の先進事例の視察を通じて、地域への応用や新たな気づきを得るとともに、部会活動の活性化を図る。
エ 将来世代・外部人材との対話の推進
人材確保が課題となっている中、高校・大学等の教員や生徒との意見交換会を開催し、地元企業の魅力や仕事の実態を伝えることで、将来の担い手確保につなげる。また、道路計画、交通行政、新幹線、空港、インバウンドなど、地域経済に影響の大きいテーマについては、行政担当者や外部専門家を招いた勉強会等を企画し、将来を見据えた共通認識の醸成を図る。
オ 観光・交流分野における情報共有と対話の強化
大型イベントやMICEに関する情報を可能な限り事前に共有し、宿泊・交通・小売・サービス業が事前に対応策や営業戦略を検討できる環境を整える。
また、インバウンド誘客、交通環境(タクシー・空港アクセス等)の改善、イベント開催の促進などについて、現場の声を踏まえた提案を行い、行政との対話を通じて地域全体の魅力向上につなげる。
3.令和8年度における特別取組事項
(1)佐賀商工会議所設立130周年事業
佐賀商工会議所は、明治29年9月29日付けで設立が認可された佐賀商業会議所を前身としており、令和8年9月29日に130周年を迎えることから、記念事業を実施する。
(2)佐賀県商工会議所連合会の法人化
佐賀県内8つの商工会議所による任意団体である佐賀県商工会議所連合会の法人化を目指して、当所内に法人化準備室(仮称)を開設し、県等の協力を得て人員を増強し、法人化に向けた具体的な調整や事務手続き等を進める。
(3)女性会全国大会に向けた準備
佐賀商工会議所女性会では、全国商工会議所女性会連合会全国大会の佐賀誘致を行い、令和9年11月にSAGAアリーナ等での開催が内定したことから、親会として協力体制を整え、女性会と一体となって準備に取り組む。
4.商工会議所機能強化のための事項
(1)外部資源の活用
会員が抱える経営課題が高度化・複雑化する中、当所単独での対応には限界があることから、外部専門機関や関係団体との連携を一層強化し、支援の質と幅の向上を図る。具体的には、佐賀県中小企業活性化協議会や佐賀県事業承継・引継ぎ支援センターと緊密に連携し、資金繰り改善、事業再生、事業承継といった分野において、早期相談から課題解決まで切れ目のなく伴走する。
また、中小企業基盤整備機構をはじめとする国の支援機関や、佐賀県産業イノベーションセンター等の県の関係機関と連携し、創業支援、販路開拓、DX・イノベーション支援など、成長志向の事業者に対する専門的支援や施策活用を促進する。あわせて、佐賀県中小企業診断士協会をはじめとする士業団体との連携を通じ、経営、財務、労務、法務等の専門的知見を活用した相談対応体制を整備し、会員の多様なニーズに的確に応える。
さらに、日本商工会議所や他地域の商工会議所とのネットワークを活用し、先進事例や有用な情報の共有、広域的な連携事業の展開を図るとともに、当所経営指導員については、外部研修や専門機関との連携を通じて資質向上を図り、相談対応力・企画力の底上げに努める。これら外部資源を有機的に組み合わせることで、限られた人的資源の中でも実効性の高い支援体制を構築し、会員企業の持続的発展に貢献する。
(2)所内業務の合理化
限られた職員数で、会員サービスの質を維持・向上させるため、所内業務の抜本的な合理化を進める。特に、経営指導員等の業務効率化と経営支援力の向上を目的に、基幹システムをTOAS(商工会議所向けトータルOAシステム)に切り替え、搭載された様々な機能(生成AIの活用、支援情報の蓄積・分析・共有等)の活用促進を図る。また、各種手数料等の収納業務について、キャッシュレス決済の導入をはじめとした支払手段の多様化を推進し、会員の利便性向上と事務負担の軽減を図る。さらに、内部書類や会議資料等については電子媒体の活用を進め、ペーパーレス化を推進することで、業務の迅速化とコスト削減、情報共有の円滑化を実現する。あわせて、メール、Webサイト、SNS等を活用した会員への情報伝達手段の最適化を進め、必要な情報を適切かつ迅速に届ける体制を整備することで、会員ニーズに即したきめ細かな支援や、効果的な事業企画・運営につなげる。
(3)会員組織の増強
会員の裾野の拡大は、商工会議所が地域の総合経済団体として、未来に向けた幅広い対話の推進や要望活動を行っていくための基盤である。経営相談や補助金申請支援、各種共済制度、人的ネットワーク形成等、会員となることで得られるメリットを分かりやすく発信するとともに、事業者の成長段階やニーズに応じたきめ細かな伴走支援等の会員が価値を実感できる事業の提供を通じて、会員数の維持・拡大を図る。
(4)財政基盤の強化
当所が地域経済を支える中核的支援機関として、継続的かつ安定的に事業を実施していくためには、財政基盤の強化が不可欠である。このため、事業の整理・重点化を行うとともに、費用対効果を踏まえた事業運営を徹底し、限られた資源を有効活用するとともに、自主財源の確保に取り組み、収益性と公益性の両立を図る。
5.重要業績評価指標 (KPI)
本事業計画の着実な実行と成果の可視化を図るため、以下の3項目を重要業績評価指標 (KPI) として設定する。
(1)会員接触率 100%
地元企業との伴走を実効性あるものとするため、経営指導員を含む全職員による会員アプローチを計画的に実施する。現在(令和6年度実績)、経営指導員等の訪問、当所窓口への来所、電話連絡等、接触があった会員は、全会員のうち約50%にとどまっている。令和8年度は、純会員(管轄地域である旧佐賀市内の会員、令和8年1月末時点で2,279社)を対象として、全ての会員に少なくとも1回は接触することを目標とし、会員接触率100%の達成を目指す。
(2)往訪件数 2,500件
地元企業との対話を重視し、訪問による課題把握と意見集約を推進する。現在(令和6年度)の往訪件数は、1,539件にとどまっている。令和8年度は、年間2,500件を目標とし、きめ細かな巡回活動を通じて、相談機会の創出と支援の質の向上を図る。
(3)純会員組織率 26.5%
商工会議所活動の基盤強化を図るため、会員組織率の向上に取り組む。現在(令和8年 1月末時点)の純会員組織率は、25.5%にとどまっている。令和8年度は、地元企業への往訪や伴走を通じて商工会議所の役割や価値を丁寧に伝え、未加入事業者の入会促進に つなげる。26.5%への向上を目標とする。
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