パネルディスカッション


東海大学教授
唐津 一氏

全日本空輸(株)取締役
小松 勇氏

キャスター
草柳 文恵氏

(株)電通クリエーティブディレクター
岡 康道氏
■有明佐賀空港の魅力と評価
私は佐賀県川副町の出身ですが、先日帰郷した際、飛行機から初めて見た佐賀の美しさに感動しました。開港当時の様子を聞くと一番機の到着を知らせる放送が流れ、地元町民もその到着を今や遅しと待ったそうです。それだけ開港は大きな出来事だったのです。
草柳 JR佐賀駅から13km、車で25分という佐賀市内とのアクセスの良さが一番の魅力ですね。さらに立地上周辺の福岡県、熊本県、長崎県の多くの町ともとてもアクセスがいいんですね。九州全体のひいては西日本の玄関口という位置付けにもつながると思います。
もうひとつ特筆すべき点は、将来的に2,000mから2,500mに滑走路を延長することを見越して計画が組まれていることです。ゆとりある700台の無料駐車場を用意している点も先行きを充分考えられていると思います。
小松 佐賀線の運航実績を見てみると、欠航となった便はほとんどなく、有明佐賀空港は航空会社にとって理想的な空港の一つであると実感しています。私どもが腐心したのは既存路線があり、規制緩和が進む中でいかに新規路線を展開するかでした。有明佐賀空港では、県による着陸料などの支援もあって運賃は福岡線なみに設定し、全日空グループをあげて、東京、大阪、名古屋と結ぶネットワークを開設しました。
唐津 有明佐賀空港は幅広く活用できる可能性の高い空港です。立地条件の良さから他の空港に着陸できないときの避難空港としても有効です。ところで飛行機の利用客にもいろいろなタイプがあります。一度徹底的に有明佐賀空港の利用客について調べることが重要でしょう。
そのうえで、利用客の期待や航空会社の要望に対応できるようなシステムを早くつくるべきです。そうすることで、「有明佐賀空港は使い勝手が良い」という評判が自ずから知れ渡っていくのだと思います。
■有明佐賀空港への期待
有明佐賀空港の開港により帰省しやすくなったとの声もありますが、それだけでは空港の発展には限界があります。需要をいかに掘り起こしていくかが今後の課題です。それには佐賀に人を呼ぶことが一番でしょう。佐賀を面白いと感じさせることです。独立して佐賀だけという展開ではなく、佐賀を起点に九州全体をアピールしていくことが大切です。
九州には見るべきものがたくさんありますが、その中でも一つのテーマを持った旅を提案すべきでしょう。例えば、焼き物に詳しくなる二泊三日のツアーもいい。つまり、佐賀を起点としたストーリーだという意味合いをはっきり持った観光を打ち出すべきです。
草柳 空港の施設を一般に開放してイベントをするとか、空港内に有明海の産品などが食べられる県内一美味しいレストランを開くなどして、空港利用客だけでなく、県内外の観光客を呼び込み、空港を晴れの場として活用することを考えてはどうでしょうか。さらに、佐賀のみならず九州の産品を買える店を揃えれば、駐車場が無料ということもあって数多くの買い物客を見込めるでしょう。
こうした食事や買い物あるいはレジャーという方向も考えられます。
小松 同感です。佐賀の魅力を高めるには観光地だけでなく、佐賀ならではのお土産、食べ物が必要です。
唐津 着陸料が国内線は二分の一、チャーター便はただというように県の空港ならではの施策がとられていますが、県主導でノンストップバスを走らせてはどうでしょうか。またPRとして、空港をテレビドラマの舞台に使ってもらうという手もあります。
将来的には、整備空港としての活用を是非とも検討願いたいと思います。これには旅客機だけでなく小型機の整備空港としての活用があります。やり方によっては有明佐賀空港は日本の航空機整備の拠点となり得る可能性が十分にあります。
小松 今後の課題は、旅客利用率を全線のレベル以上とすること、個人客の増加、貨物需要の開拓などです。唐津先生の言われるようなバスを優先的に速く走らせたら利用者が格段に増えたケースもあります。空港へのアクセス利便を高めることで、需要を喚起することができると思います。
■国際空港に向けての有明佐賀空港の
 将来
将来的にアジアと日本の関係を考えた場合、九州国際空港の必要性についての異論はないと思います。
肝心なのは九州のどこにつくるかです。私も佐賀に国際空港ができたらどんなにいいかと思いますが、それには、反論の余地のない「エコロジー」すなわち自然環境に優しいという強い旗を掲げるべきです。
草柳 国際空港として進めていくのであれば、西日本の玄関口であるという意識を持つことがまず重要でしょう。
それと同時に、既に描かれている佐賀空港地区の主要アクセス構想図のように、旅客を大量に輸送できる広域的なアクセス網を充実させていくことが必須条件になります。
小松 有明佐賀空港からの国際チャーター便の運航も始まったと伺いました。国際チャーター便の運航を積極的に進めていくことは、国際空港の実現につながるものと思います。
有明佐賀空港は国際空港へと飛躍する可能性を秘めた空港だと感じています。有明佐賀空港では滑走路の延長が既に検討され、また潜在需要の期待できる地域に立地していることなどから、ポテンシャルは高く、将来的な期待が持てます。空港へのアクセス利便を向上させるなどして活性化を推進することにより、国際空港へと大きく飛躍する可能性がさらに開けてくると思います。
唐津 スイスでは国際会議が年中開催されていますが、なんとベルン空港はコンベンション空港なんです。空港に国際会議場、展示場が併設されていて、地下道を抜けていくとすぐに会場です。本当に便利で見事な空港だと思います。地域の特性に合わせて空港に様々な機能をうまく組み合わせていくことが世界の常識ではないでしょうか。そういう意味でも、大きな構想を考えて将来的にどのような空港を目指すのか大いに議論する必要があります。

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