3.有明佐賀空港と空港アクセスの段階的発展


 構想の期間は、2010年2020年2040年において有明佐賀空港がどのようになっているかを指摘していきたい。

(1) 2010年
 現在の福岡空港は限界離着陸回数が14万回/年程度であるといわれており、今日既にほぼその限界値に到達している。有明佐賀空港は、現在建設中である新北九州空港とともに福岡空港との共存(二眼レフ構想)・共栄を目指して、第一次整備・拡張計画によって福岡県南部域を含む広域臨空経済圏の構築を図る。
 そのためには周辺域の河川改修、ミニ・スーパー堤防建設計画、両岸域に鉄道・道路建設計画を行うことによって、種々の研究施設や新しい産業誘致による経済総合開発計画を実現し「大筑紫経済圏構想」の準備段階とする。

≪福岡空港と有明佐賀空港の二眼レフ構想≫
 有明佐賀空港の拡張・増設を図ることにより、福岡空港の抱える容量限界という問題点を補い、また両空港の一体的発展によって機能分担を進める。具体的には次のような内容について考慮する必要がある。
 (1) アジア太平洋地域の増大する航空需要に対応する。
 (2) 有明佐賀空港と福岡空港とのアクセスをさらに容易にする。
 (3) 滑走路の延長を行い国際的な活力を支える24時間利用可能な国際空港化を図る。
 (4) 特に物流基地としての役割を重視する。
 (5) 現在建設中である新北九州空港との役割分担も視野に入れる。



(2) 2020年
 有明佐賀空港の第二次整備・拡張計画(4000m級滑走路1本)とその周辺域の鉄道網(長崎新幹線と有明新幹線の新設や久大本線や西鉄線の延長)、道路網(2つの環状線計画と高速道路網の構築)の整備を図ることを「大筑紫経済圏構想」実現のための総合的経済開発計画における第二段階とする。

1 鉄道網による交通アクセスの充実
 (1) 鹿児島新幹線の建設
    博多−鳥栖−久留米−熊本−鹿児島
 (2) 久留米・有明佐賀空港を経由する長崎新幹線の建設
    博多−鳥栖−久留米−有明佐賀空港−鹿島−大村−諫早−長崎
 (3) JR九州久大本線の有明佐賀空港延長によって筑後川左岸域の開発
    大分−久留米−大川−有明佐賀空港
 (4) 西日本鉄道の有明佐賀空港乗り入れによって筑後川右岸域の開発
    宮ノ陣−北茂安−千代田−諸富−有明佐賀空港

2 高速道路網と環状道路の構築
 (1) 佐賀市を中心とする環状道路計画
 (2) 唐津−相知−厳木−多久−佐賀−有明佐賀空港の高規格道路建設
 (3) 伊万里−武雄−佐賀−有明佐賀空港の高規格道路建設
 (4) 有明海沿岸道路の建設

 

(3) 2040年の有明佐賀空港の国際空港化と大筑紫経済圏
 2040年における計画は、有明佐賀空港が国際空港として十分に機能するための空港整備・拡張計画と有明佐賀空港が必要であるための周辺域の状態を「大筑紫経済圏」の完成した経済圏の姿として説明されなければならない※11
 分析の方法論としては、2040年に達成されるべき政策目標を明確にして、その実現のためのシナリオを説明することによって、それぞれの通過時点での過渡期としてのシナリオの確認を行ない、その時点において達成されていると考えられるべき内容を説明することとする。
 「大筑紫経済圏構想」を実現するためには諸企画・諸プロジェクトの内容とその推進方法・シナリオが重要な要素となると考えられる。
 また、その中核的な役割を担う社会資本である「有明佐賀空港」の国際空港化に伴う拡張投資のための費用負担とその建設投資効果は直接的効果と間接的効果を含めて大きい経済波及効果があると期待される。それは同規模・同内容の投資を他の空港の拡充計画を行なう場合と比較するならば、用地買収費用や埋め立て費用、滑走路や空港関連施設等の建設費用だけでも数十分の一の費用と数分の一の期間によって建設することが可能であることから、その経済波及のネットの経済効果が大きいと期待されることが説明される※12。このネットの経済効果が大きいということは、より少ない財政負担のもとで、この地域への雇用をはじめとした民間経済・産業への波及効果が大きいという意味であり、それだけに日本経済の国際競争力の強化に貢献する程度が大きいという意味である。
 この「大筑紫経済圏構想」と「有明佐賀空港」の国際空港化は、後に説明するように両要素(諸計画)が「ポジティブ・フィード・バック」する過程としてデザインされる必要がある。その結果として日本経済の安定性を早急に回復し、安心して生活できる地域経済を再構築するために、基本的に重要な提案である。また、巨額の累積債務の重圧に対して国民の負担を軽減すると言う意味においても重要な政策判断である※13
 「大筑紫経済圏構想」と「有明佐賀空港」の国際空港化(4000m級滑走路2本を想定)によるこの地域の経済波及効果を創出するためには、次のような施設の誘致・建設が必要である。

 (1).鉄道網による交通アクセスの充実
  (1) 久留米・有明佐賀空港を経由する長崎新幹線の建設(再掲)
     博多−鳥栖−久留米−有明佐賀空港−鹿島・嬉野−大村−諫早−長崎
  (2) 有明新幹線の建設 有明佐賀空港と鹿児島新幹線とのアクセス強化
     鹿児島新幹線−大牟田−有明佐賀空港
  (3) JR九州久大本線の有明佐賀空港延長によって筑後川左岸域の開発(再掲)
     大分−久留米−大川−有明佐賀空港
  (4) 西日本鉄道の有明佐賀空港乗り入れによって筑後川右岸域の開発(再掲)
     宮ノ陣−北茂安−千代田−諸富−有明佐賀空港

 (2).高速道路網と環状道路の構築
  (1) 久留米市を中心とする半径10km程度の高規格環状道路の建設
  (2) 久留米市を中心とする半径25km程度の高規格環状道路の建設
  (3) 西九州自動車道の伊万里−松浦−佐世保の建設
  (4) 佐世保−武雄ジャンクションから鹿島までの延長
  (5) ミニ・スーパー堤防道路(日田−久留米−有明佐賀空港)

※11 有明佐賀空港を低コストによって拡張・増設することによって、相対的に付加価値の高い物流は福岡空港に、付加価値が相対的に低い物流は有明佐賀空港にという住み分けが当面の間は必要である。

※12 たとえば福岡市の新宮九州国際空港建設説や糸島説は有明佐賀空港の拡張案と比較すると建設費用では計画値でも数倍(三千億円対1兆円)の値であり、実際には数十倍(関西国際空港と同規模の費用ならば10兆円を超える)となると予想される。また、建設開始から完了までの期間は有明佐賀空港が数年であるのに対して20数年が必要である。しかし、論者の中には「福岡案は費用が巨大であり、期間が長いからこそ経済効果が大きい、それ故に佐賀説よりも価値がある」と主張する20世紀型経済開発論者(経済学的無知)がいることも事実である。

※13 今日経済的には何もないと考えられているこの地域においてより少ない予算でこれからの日本経済にとって必要な社会資本を最小限度の費用で建設させると言う提案である。



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