5 おわりに

 平成10年7月に開港した有明佐賀空港は佐賀県の空の玄関口であると同時に有明海沿岸域と佐賀平野と筑後平野全体にとって新しい可能性の始まりでもあった。有明佐賀空港開港までには四半世紀の期間を要したその過程で日本経済は大きく変貌してきたためにその役割も大きく変化してきた。
 しかし、本文で見てきたように、この有明佐賀空港を含む佐賀空港地区の開発ポテンシャルは大筑紫経済圏構想として考えられるように非常に大きなものがある。
 すなわち、この佐賀空港地区は九州の人口・経済の重心に位置するという立地条件にあり、周辺には広大な農地と多くの河川があるということから臨空地域としての開発可能性は極めて大きいものがあるのである。また極めて安定した気象条件のもとで、滑走路の延長は容易であり、将来は安価な建設コストによる空港の拡張や国際空港化によって、九州経済全体の活性化を図るための重要な地域となることは明白である。
 一方、佐賀空港地区の周辺のこの地域には、古くから九州の経済の中心として佐賀平野と筑紫平野からなる大筑紫経済圏が広がっている。この佐賀空港地区を開発するシナリオは経済波及効果とそれに伴う経済的優位性は特筆すべきものがある。
 このような開発のシナリオを展開して行くためには、佐賀県自体の変貌のシナリオも企画されなければならない。それは、(1)海と河川に恵まれた環境問題を重視した、(2)財政負担が少ないという意味で経済的負担がどの地域よりも少ない、(3)経済開発効果がコスト・パフォーマンスで考えて最も効率的だあること、そして、(4)共通の歴史と文化があり、(5)周辺域への波及効果が最も大きいという意味で日本経済全体に与える影響が大きい地域であることである。

 このような大筑紫経済圏構想を実現していくための手法は、この地域住民とともに産学官が一体となった夢の構築とその夢を実現していくための発展・進化のシナリオの共有である。
 佐賀県が今後更なる発展を遂げるためには、(1)「大筑紫経済圏構想」とそのシンボルとしての有明佐賀空港の「国際空港」化との間には、次のような複雑系の考え方にある「ポジティブ・フィード・バック」の考え方にもとづいたデザイン力と実行力が重要な要素となる。
 また、(2)ヒト・モノ・カネの国際化への努力が必要である。
 ヒトの国際化とは、諸外国についての知識や理解を深める以上に、国際的なもてなし心の涵養であり、それ以上に自分達の歴史と文化・生活が諸外国とどの様に差異があるか、何が特徴であるかについての理解と認識を深めることにある。
 モノの国際化とは、輸出・輸入という国際貿易を拡大するということだけではなく、自分達の生活にかかわって周辺にあるモノ全般についての理解とその背景についての理解を深めることである。また、有明佐賀空港の国際線乗り入れのために必要不可欠な入管事務手続きの簡素化のための諸制度・設備の構築が急がれる課題である。
 最後に、カネの国際化とは、海外への投資や海外からの投資という金融の国際化という側面のみならず、土地・不動産・金融債権・債務の保有に関する国際化への理解を深めることである。

 

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